その人の日常的な行動からも心理は探ることができます。あなたが恋人とのデート際に、恋人から「行きつけ」のお店などに連れていかれた経験などはありませんか?ただ単に、店を選ぶのが手間だったからなどの理由はあるかもしれませんが、そこには心理学で表される「ホームグラウンド効果」があるのかもしれません。
行きつけの店では優位に立てる?
レストランや飲み屋に行くときに「どのお店に入ろうか」となったら、やはり自分の行きつけの店へ行くことが多いのではないでしょうか。
特に異性をデートに誘ったときなどは、自分がよく知っている店や相手を連れていった方が「この店では魚料理がおすすめだよ」といった具合に、自信を持って相手を上手くリード出来ます。
この行きつけのお店に行きたがる心理は、心理学では「ホームグラウンド効果」で説明できます。
野球やサッカーチームは、ホームグラウンドの方が実力を発揮できると言われています。それと同じように、行きつけの店ならそこの特徴をよく知っていたり顔見知りの店員もいるので、相手より優位に立って力を十分に発揮できるのです。
- ホームグラウンド効果とは?
- 一般的に、野球やサッカーなどのスポーツはアウェイ(敵地)での試合より、慣れ親しんでいるグラウンドで大勢の地元のファンからの応援を受けて行うホーム(本拠地)での試合の方が、勝率が高いとされる。
店員に威張る人がいるのはなぜ?
ホームグラウンドである店に連れて行きたがるのは「相手より優位に立てる」という理由がありました。少し話題は変わりますが、あなたの周りにお店のスタッフや店員に威張った態度をとる人はいませんか?これも似た理由で説明することができます。
あなたがデートなどで素敵なお店に連れて行ってもらったのに、その人が店員に偉そうな態度で文句を言ったりしたら、せっかくの料理も台無しですよね。このような人は、心理学的には弱い立場の人に威張ることで、自分の優位性を確認していると考えられます。
飲食店などサービス業は、お金を受け取ってサービスを提供する店側と、お金を払ってサービスを提供してもらうお客様側で明確な立場の違いが存在します。
自分の立場が上だと感じる状況では、やたら横柄な態度をとってしまう人はいるものです。よく「お客様は神様」などと言いますが、「お金を払う自分の方が偉い」と勘違いしてしまうのは感心できませんね。
余談:ホームグラウンドで勝率が上がる本当の理由
ここっからは余談になりますが、サッカーや野球での「ホームゲーム」と「アウェイゲーム」での勝率を比較してみました。結果は想像通りで、多くのスポーツチームは地元開催の「ホームゲーム」の方が勝率が高くなっています。
ではなぜ、ホーム試合の方が勝率が上がるのでしょうか?
よく言われている理由は3つあります。
- アウェーチームは遠征の長旅で疲れているから。
- アウェーのゲームは過密日程になりがちで、アウェーチームの疲労が蓄積されやすいから。
- 地元のファンの熱心な応援で、ホームチームのやる気が高まるから。
①~③の全てが当てはまり、特に③の影響が大きいように感じませんか?
ところが、シカゴ大学ビジネススクール教授、トビアス・J・モスコウィッツらが、サッカーやアメフト、野球、アイスホッケー、バスケットボールなど、過去数十年に及ぶ膨大な試合データを緻密に分析したところ、上記3つの理由のどれも、ホームチームの勝率に影響を与えているという結果は得られなかったのです。
- トビアス・J・モスコウィッツ
- シカゴ大学ビジネススクール教授。専門はファイナンス、とくにデータを使った実証系の行動ファイナンス。2007年に40歳以下の最も優れたファイナンスの研究者に贈られる「フィッシャー・ブラック賞」を受賞。
では、何がホームチームの勝率を押し上げていたのでしょうか?
それは、審判の「地元びいき」的な判定だったのです。ホームゲームとアウェーゲームで比較すると、ホームチームに有利な判定が下されやすく、一方、アウェーチームに不利な判定が下されることが多いということが数字として明確に現れてきました。
例えば、野球で言えば、ホームチームのバッターは見逃し三振が少なく、フォアボールが多くなるのだそうです。
サッカーでは、アウェーチームがファウルを取られる数が増えることが分かっています。
また、アディショナルタイム(ロスタイム)の設定にも明確な違いがあるそうです。過去の試合データの分析によれば、ホームチームが1点勝っている時のアディショナルタイム(ロスタイム)は平均で「2分」程度。逆に、ホームチームが1点負けている時のロスタイムは平均で「4分」と、ホームチームが勝っている時の2倍の長さになるのだそうです。
- アディショナルタイム(ロスタイム)とは?
- サッカー や ラグビー などの球技における用語。 球技の試合において、 競技者の交代・負傷者のアピールや怪我の程度の判断・負傷者の搬出などにより空費された 時間、いわゆる「空費時間」を指す通称。サッカーでは、「追加時間」という意味の「アディショナルタイム」が使われる。主審の裁量によってロスタイムが決定される。
審判が「地元びいき」の判定になるのには「集団への同調圧力」が影響しているようです。地元の応援者はホームチームの勝利を願っており、初めから「地元びいき」です。判断に迷う微妙なプレーはホームチームに有利な判定になることを望んでいます。
つまり、その地元ファンの目(同調圧力)が審判に向けられてしまうことから「バイアス」がかかるようです。
心理学のホームグラウンド効果とは意味合いは違いますが、優位に立ちたいときは慣れ親しんだ場所を選ぶのが良さそうですね。