慰謝料は精神苦痛に対する損害賠償
慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた「精神的苦痛」に対する損害賠償で、苦痛の度合いを金銭に換算して請求します。
不法行為の具体例としては、不倫などの不貞行為、DV(ドメスティック・バイオレンス)などの暴力、生活費を渡さないような悪意の遺棄、セックスレスなどが挙げられます。
ただし、相手から精神的苦痛を受けたといっても、必ず慰謝料を請求できるわけではありません。
どちらにも責任がある場合や、そもそも相手に責任がない場合は、請求することはできません。この具体例として挙げられるのは、性格の不一致や信仰の違い相手が強度の精神病を患っている場合です。
離婚原因に対する慰謝料請求は、離婚成立後3年以内に行う必要があります。ただし、生命・身体に対する不法行為に対しては、2020年4月1日より、離婚成立後5年まで慰謝料請求が可能となっています。
不法行為を証明する証拠とは?
慰謝料請求の前提として、相手に不法行為を認めさせなければなりません。いつから、どのくらいの頻度で行われたのか。不倫であれば誰とどんな行為を行ったのかを、客観的に示すものが必要です。これらは慰謝料の金額にも影響します。
相手が不法行為を認めて慰謝料の金額に応じるなど、双方の話し合いで解決できれば良いのですが、慰謝料はもとより、不法行為すら認めない場合は、「調停」や「裁判」を起こすことになります。
裁判となれば、証拠の提出が必要になるため、相手が隠す前に日記やメール SNS などの内容を記録し音声は録音しておきます。被害を受けた際にかかった医師の診断書も有効です。
慰謝料の相場と話し合い
慰謝料の金額は、まずは当事者同士の話し合いで決めます。話し合いもなく、苦痛を受けた側が一方的な金額を請求しても、そのまま支払われるわけではありません。
東京都家庭裁判所の統計では、慰謝料の約95%が500万円以下です。1,000万円以上の高額な慰謝料はごくまれで、さらに実際は50万円から300万円とかなりの幅があります。
多くもらいたいからといって、相手の経済能力に合わない金額を請求しても、納得して支払ってもらうことは難しいでしょう。現実的な金額で折り合いをつけることも大切です。また、相手の不法行為を立証できないケースや、お互いに責任があるケースでは、慰謝料が請求できない可能性もあります。
話し合いで慰謝料の金額が決まったら、その他の離婚条件と合わせて強制力のある「公正証書」に整えておきます。支払い方法は現金一括がベストです。まずは慰謝料が請求できるか、相場はどのくらいか一度弁護士に相談してみましょう。弁護士の無料相談を活用してみてもいいかもしれません。
- 慰謝料の金額がアップする要素とは?
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- 支払う側の責任が大きい
- 支払う側の地位や経済力が高い
- 未成熟な子どもがいる
- 婚姻期間が長い
- 精神的苦痛が大きい
- 慰謝料の金額がダウンする要素とは?
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- 請求する側にも責任がある
- 支払う側に経済力がない
- 婚姻期間が短い
離婚請求調停とは?
慰謝料の金額にお互い納得できない時や、相手が話し合いに応じる様子がなければ、裁判所に調停を申し立てます。
「慰謝料請求調停」を申し出ることもできますが、離婚調停を申し立て、その中で慰謝料についても話し合うのが一般的です。折り合いのつかない慰謝料分を財産分与に含めるなどでバランスをとることも可能になります。
離婚成立後であれば、「慰謝料請求調停」だけを申し立てます。
不倫相手に慰謝料の請求するには?
不倫が原因で離婚に至る場合、相手が既婚者であると知っていたならば、連帯責任として配偶者と不倫相手の両者に慰謝料を請求することができます。そのためには、「性的関係がある」「相手が既婚者だと知っていた」という二つの証拠が必要です。
この他、配偶者の親族に対して慰謝料を求めることもできますが、暴力や暴言の記録など、よほど有利になる証拠が必要です。
不倫相手との示談交渉
離婚はせずに、不倫相手に慰謝料だけを請求するという方法もあります。その場合、まずは不倫相手と話し合いをするか、「内容証明郵便」で通告します。弁護士を代理人立てて交渉することもできます。
相手が承諾すれば、慰謝料の支払い方法や金額について示談書や公正証書を作成します。
相手が認めなければ、簡易裁判所で「調停」を行う、または簡易裁判所か地方裁判所で「民事裁判」の手続きをとります。
不倫を離婚原因として離婚裁判を起こす場合は、申し立ての内容に配偶者と不倫相手双方への慰謝料請求を盛り込むことができます。
内容証明郵便とは?
内容証明郵便は、郵便局のサービスの一つです。相手に送った手紙の写しを、郵便局が5年間保管し、「いつ、どのような内容のものを、誰から誰に送ったのか」を郵便局が証明します。法的な拘束力はないものの、相手への心理的なプレッシャーになります。離婚条件や不倫相手への慰謝料請求など、相手に確実に伝えたい内容がある場合のほか、口頭で伝えにくい場合、直接文章を手渡せない場合に有効です。文章の作成は行政書士や弁護士に依頼できます。
内容証明郵便の手続き
内容証明郵便の手続きは、郵便局の窓口で行います。ただし、取り扱いがあるのは集配郵便局などに限られます。事前に問い合わせてから行きましょう。窓口には、以下のものを持参しましょう。
- 相手に送る文書(内容文書)
- 内容文書の写し2通(コピー可能)
- 封筒(住所氏名を記入)
- 印鑑(訂正印として念のため)
- 郵便料金(基本料金+一般書留料金+内容証明料金)
なお、郵便物を相手先に配達した事実を証明するには、別途「配達証明」が必要となります。
パソコンの利用に慣れているなら、24時間インターネットで受付可能な「電子内容証明サービス(e内容証明)も便利です。